さいごまで

 いつか必ず来る別離が、少しでも先だといい。

「貴様はどうしてそうも軟弱なのだ」
「うるさい。ドラッケンに無縁の繊細さは、人間にとっては美徳なんだぞ」
「美徳でも悪徳でも闘争の役に立たぬなら意味がない」
「おまえみたいに美徳ゼロよりもずっとスバラシイ生き様だろうが」

 戦闘中もその後も、いつでも罵詈雑言の応酬は繰り返される。ただしどうも勢いが足りないのは、俺の血も足りないからだ。脳内酸素が少な過ぎて、明晰な頭脳の調子が悪い。
 ギギナは完璧なる美貌を侮蔑に歪めながらも、黙々と咒式を紡いで治療を続けている。合間に散々俺を誹謗しながらも、今日も最後通牒だけは仕舞われている。
 すなわち俺のような奴は相棒に相応しくないとは。
 俺なんかもう必要ないとは、今日もまだ言われない。
 情けなく弱い俺を詰りながらも、まだ俺の隣で生きていくつもりらしい。

 脆弱で無様な俺に文句があるなら、おまえが見張っていればいい。
 俺が勝手に死なないように。何処かへ消えないように。
 世界は数多のお手軽な死で満ちていて、独りにされたら何時のたれ死ぬかわからない。
 それでも俺は構わないけれど、おまえが嫌だというなら。
 ずっと隣で情けない姿を見続ければいい。
 いつか、おまえが飽きるまでは。
 いつか、俺の元から去る日までは。

 ……そして願わくば、最期までおまえが飽くことのないように。
 死がふたりを分かつ日までも。

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15:不意にガユスだらけなのに気付きつつ、裏手はギギナがいっぱいなのに気付く。なんだか暗いガユスと、報われてないっぽいギギナ。(06/06/16)070514改稿

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