横で目を瞑っている男を、殺気をこめて睨みつける。
どうせ、眠ってはいないんだろう。
突如として異様にムカついたのはいつものことだ。奴に怒る理由なんて幾らでも転がっている。
ふと思いついて、眠ったふりを続ける相手の耳元に囁きを落とす。
「おまえなんか、だいっきらいだ」
ぴくりと、身体が動く。
やっぱり寝た振りしてやがったな。
俺に気付かれたとわかったろうに、意地でも目を開けようとしない男は、今なにを考えているのだろう。
まるっきり無反応かと思ったらそうでもなかった訳で。とりあえず何らかの感想は浮かんだんだろうな。くだらない、と無視されなかったのがむしろ意外だった。
即座に私も嫌いだと返されなかったのも。
瞼に隠された瞳には、どんな感情が隠されているのだろうか。
伸び上がって顔を覗きこんでみたら、くるりと寝返りをうたれてしまう。おや、ちゃんとご機嫌ななめってことは、ちょっとは傷ついたとか?
いつでも余裕たっぷりに俺を翻弄する男が、少なからず動じているのが非常に心地良い。
「……うそだよ」
背中越しに呟いてみると、もう一度小さく身体が動いた。
だからって、好きだとは言わないけどね。
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01:巴さんに、小学生のような二人だと言われました。ううむ、すみませぬ。070512改稿