すぐ横で無防備に眠る男を見ていると、無性に苛立つ瞬間がある。
こんな弱いイキモノに、どうして関わり続けているのか馬鹿らしくなってくる。
「ん……」
滲み出た殺気に反応して、ガユスが小さく呻いた。
ごそごそと寝返りを打ち、しかしてギギナに顔を向けて落ち着いてしまう。
眼鏡を外している所為か、寝顔は稚さまで感じさせる。湧き出る感情は名づけるなら、柄にもない庇護欲であり相反する加虐心であり。
相棒と記号をつけただけで、自分のことを解ったつもりになっている男に、愚かさを思い知らせてやりたくなる。
自分がどれだけ危険な獣の前で急所をさらけ出しているのかを。
首筋にそっと手を伸ばし、僅かに力をこめればいいだけの位置まで近付いて。
自らが抱く感情を理解できぬまま、無性に苛立つ想いに任せてくびり殺してやろうかと目論んでみても。
――けれど、今日もその手をそれ以上は動かせない。
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29:その感情を理解せず、無性に苛立ち殺してしまいたいくらいで。
それでも、穏やかに眠る相手の安らぎを乱すのは躊躇われて。
アンソロ中の落書きです。いえ別にこういう話ではないんですが……とりあえず、更新に飢えてますので思わず。(06/08/27) 070522改稿。